肝炎情報センター

                    肝炎の研究動態


ラクトフェリンが症状改善に
 効果 がん学会に報告
C型肝炎ウイルスの確認
ウイルスの変異株
新型肝炎ウイルス発見
新たんぱく質:IFNに似た
 「リミチン」発見
C型肝炎研究開発加速
「C型肝炎ウィルス」
 遺伝情報をもらって撃退・・・


TOP PAGE





















      ラクトフェリンが症状改善に効果
               がん学会に報告
 

 ヒトの母乳や牛乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」が、慢性C型肝炎の症状改善に効果のあることが、国立がんセンター(東京都中央区)の研究グループによる臨床試験で分かった。特に、60歳以上の高齢者に効果がみられるという。また、動物実験では、大腸や肺などでの発がん予防効果も確認された。名古屋市で27日まで開かれた日本癌(がん)学会で報告された。

 ラクトフェリンは、母乳のほか、涙や精液などヒトの体液にも高い濃度で含まれる。同センター中央病院で、慢性C型肝炎患者44人に8週間、牛乳からとったラクトフェリンの錠剤を与えたところ、8人でウイルス量が半分以下に減った。8人とも60歳以上で、高齢者では3人に1人の割合で効果があった。下痢や悪寒などの軽い副作用はあったが、ヒトが体内に持つラクトフェリンが誘導されて増える効果も分かった。

 また、ラットなどへの投与実験では、大腸や肺、膀胱などいろいろな臓器で発がん予防効果があり、がん転移の抑制や免疫細胞の増加なども確認された。

 ラクトフェリンは胃液で分解されるため、効果のメカニズムはまだ不明。また、市販の牛乳は加熱処理してあり、大量に飲んでも効果はないという。しかし一部のヨーグルトではラクトフェリンを加えた商品があるという。同センター研究所の飯郷正明・化学療法部室長は「高齢者に効果があるのは、年をとると血液中のラクトフェリンが減ることと関係があるかもしれない。現在、大腸がん患者にも投与実験中で、抗がん剤との併用なども考えられる」と話している。
 毎日新聞2003年9月27日
      

      
「C型肝炎ウィルス」
             遺伝情報をもらって撃退・・・
   

  C型肝炎ウィルスの遺伝情報の断片を、人の肝細胞に入れることでウィルスの増殖を抑えることに成功した。 東京医科歯科大学と東京大学の共同研究チームが開発する。 C型肝炎の新しい治療法につながる可能性があり,数年以内に臨床研究につなげたいとしている。5月22日の日本肝臓学会で発表される。

 HCVの遺伝情報はリボ核酸(RNA)に記されているが、この研究チームはウィルスのRNAの断片がウィルスの増殖を抑える「RNA干渉」という手法を利用した。 このRNA干渉が起こる理由は完全には解明されていない。

 HCVに感染した人の肝細胞に,試験管内で人工的に作った断片(HCVのRNAの500分の1)を組み込んだところ、ウィルスの97%が死滅し、さらに、断片が自動複製されるように細工したところ8日間で全ウィルスが消えた。

 今後の臨床研究次第では、C型肝炎の有効な治療法となる可能性がある。
 朝日新聞2003年5月15日


        ■C型肝炎研究開発加速

 医薬品関連企業がウイルスによって起こるC型肝炎の治療薬や器具の開発に相次いで乗り出す。日本たばこ産業(JT)はウイルスの増殖を抑える新治療薬の臨床試験を国内で始めた。三菱化学など5社が出資するジェー・ジー・エスも今秋をめどに治療薬の効果を予測する新検査器具を商品化する。C型肝炎は肝硬変や肝臓がんに進行する恐れがある。同肝炎の関連医薬品・器具に対する需要が増えるとみて研究開発を加速する。

 JTは自社開発したC型肝炎治療薬「JTK−003」の国内での第一相臨床試験を始めた。C型肝炎ウイルスが増殖する時に必要な「ポリメラーゼ」という人体内の酵素の働きを阻害することで、ウイルスが増えるのを防ぎC型肝炎を治療する。

 従来、C型肝炎の治療薬では、体内の免疫力を向上させるインターフェロンが主流で、C型ウイルスそのものの増殖を抑える医薬品の開発事例は世界的にも少ない。JTは早期に臨床を終え商品化したい考え。

 ジェー・ジー・エスは、C型肝炎患者の遺伝子を調べ、インターフェロンの効果を投与前に見極める検査器具を今年秋に実用化する。インターフェロンは投与する患者により効き目が違うためで、遺伝子レベルの体質差により医薬品の量や種類を決める「テーラーメード医療」につながる。

 この器具はデオキシリボ酸(DNA)チップと呼ばれ、ガラス基板上に約5百種類のDNA断片を貼り付けて作る。患者の肝臓細胞から抽出した遺伝子をチップに乗せて反応させ、インターフェロンを投与した時の効果を予測する。

 チップは出資会社で臨床検査大手のエスアールエルと、三菱化学の子会社の三菱化学ビーシーエルに供給する。両者が医療機関の依頼を受け、チップを使った検査を手がける。
 C型肝炎ウイルスの国内の感染者は推定2百万人。今後発症者が増える恐れがあるとして、社会問題化しつつある。
 日経 2001年2月21日

      ■C型肝炎ウイルスの確認

 これまでC型肝炎ウイルスの遺伝子は解明されていましたが、ウイルスそのものは発見されていませんでした。この度、東京都C型肝炎研究プロジェクトチームが4年間に渡って、研究した結果、遂にC型肝炎ウイルスの確認に成功しました。

 他のウイルスの場合、まずウイルスそのものが発見され、その後遺伝子情報などが解析されるのが普通でした。しかし、C型肝炎はウイルスが発見できないまま、1988年、米国の研究者が患者の血液にしかない遺伝子を見つけ、これを利用して次々にウイルスの遺伝子のかけらを取り出し、情報を解析しました。これによって検査薬もできました。

 しかし、感染者の血液中には色々なウイルス様のものがあり、どれがC型ウイルスなのか確認できませんでした。
 同研究プロジェクトチームは別のウイルスにC型肝炎ウイルスの遺伝子を入れ、表面蛋白を作らせました。これを利用してこれまでより精度の高い、C型肝炎ウイルスの表面にだけくっつく抗体を作り出しました。この抗体を濃縮した感染者の血液に混ぜ、免疫電子顕微鏡で抗体がくっつくウイルスを探し、発見しました。

 ウイルスは直径55〜65ナノメートル(1ナノメートルは百万分の1ミリ)の球状粒子。表面には約6ナノメートルの細い棘がついています。形などから、フラビウイルス科という日本脳炎ウイルスの仲間の1種であることも確かめられました。

     ■ウイルスの変異株

 人とウイルスの闘いは,変装のうまい犯人を人相書きを頼りに捕まえるのに似ている。
 人の免疫系は、一度出会ったウイルスの持つ様々な蛋白質(抗原)の特徴を探り,次回からそれに対応する抗体を作って迎撃する。ところがウイルスの遺伝子は変化しやすく、蛋白質の特徴が変わった変異株には、免疫系の迎撃体制を巧みに逃れるものがある。

 ウイルスの変異が激しいとワクチンを作ることすら出来ない。実用的なエイズワクチンがまだできないのはこの為。B型肝炎にはワクチンがあるが、変異株によっては効かなくなる。朝日新聞より

     ■新型肝炎ウイルス発見

   肝炎を起こす新しいウイルスとして注目されているTTウイルスの全遺伝子情報(ゲノム)が解明された。日本人のほとんどがこのウイルスに感染しており、このうち特定の遺伝子の型だけに病原性があることが明らかになった。

 自治医大の真弓忠教授が三日、こうした最新の成果を、東京で開催中の日本医学会総会で報告した。研究グループは、このウイルスが世界に広く分布し、遺伝子の型が極めて多様であることも見つけた。病原性は、日本人の大人で、約10%が感染している遺伝子 1 型だけにあった。ごくありふれたウイルスが人間と共存し、特定の遺伝子型が病気を起こすケースとして関心を集めている。

 肝炎ウイルスはA型,B型,C型,など、計6種が分かっている。しかし、現在もこれら既知のウイルスがないのに輸血などで肝炎になる場合があり、その病原ウイルスが追求されている。その有力候補に浮上しているのがTTウイルスだ。
 真弓教授らは97年、国立金沢病院に保存されていた輸血後肝炎冠者5人の血液のうち3人から新しいウイルスの遺伝子断片を分離し、男性患者のイニシャルからTTウイルスと名づけていた。

 この遺伝子断片を手がかりに、日野茂男鳥取大学教授らが約3900塩基あるTTウイルスの遺伝情報を全て解読した。人に感染するウイルスとしては初めて一本鎖環状のDNAを遺伝子として持っていることを確かめた。

 ウイルスごとに遺伝子の変異が大きく、19までの遺伝子型に分類できた。国立金沢病院の保存血液から最初に見つかった遺伝子1 が肝炎などの原因になりそうなことも分かった。他の遺伝子型は今のところ、病原性は無いという。大人の遺伝子型1の感染率は日本で、約10%、アフリカでやく50%、欧米で低く、英国で2%と推定されている。
 真弓教授は「こうしたウイルスと病気との関係の解明が重要」と話している。
 日本経済新聞


  ■新たんぱく質:IFNに似た「リミチン」発見 阪大

 大阪大医学部第2内科の織谷健司助手らの研究チームが、マウスの培養細胞から、ウイルス性肝炎や白血病の治療に使われている1型インターフェロン(IFN)に似た構造のたんぱく「リミチン」を発見した。米科学誌「ネイチャー・メディスン」6月号で発表する。1型IFNには正常な骨髄細胞や赤血球を死なせたり増殖を抑えてしまう副作用があるが、リミチンにはほとんどなく、治療に使えれば副作用を大きく減らせる可能性があるという。

 リミチンは、マウスの骨髄の中にある間質細胞(ストローマ細胞)の中から見つかった。構成するアミノ酸配列などが1型IFNとよく似ていた。1型IFNは体細胞の表面にある「1型インターフェロン受容体」と結合すると、ウイルスやしゅようなどを抑える働きをするが、リミチンもこの受容体と、同じように結合した。

 1型IFNはBリンパ球や骨髄細胞、赤血球などを死なせたり、増殖を阻害する副作用がある。しかし、リミチンはBリンパ球の増殖は阻害するが、骨髄細胞と赤血球にはほとんど影響しなかった。

 現在、リミチンの抗ウイルス作用などについて詳しく調査中で、織谷助手は「リミチンが1型IFNと似た機能を持っている可能性は高い。副作用が少なく、治療に使いやすい新種のIFNとなるのではと期待している」と話している。 
 毎日新聞2000年5月29日