肝炎情報センター

                    ウイルス感染の検査を











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 日本肝臓学会がまとめた「肝がん白書」によると、わが国の原発性肝がんの90%以上は、B型またはC型肝炎ウイルスの感染が主な原因である。がんの中で肝がんは、胃がん、胃がんに次いで3番目に多く、年間約3万人が死亡している。またB型肝炎から発生する肝がんは45〜55歳の男性に多く、C型肝炎からの肝がんは60〜70歳の男性に多い。

 世界における肝がんの発生頻度は、日本を含むアジア、アフリカ地域で高く、西欧や米国の白人では低い。国内では男女とも大阪府、福岡県がともに一、二位を占め、新潟県、秋田県は最も低い。つまり肝がんの発生頻度は西高東低である。C型肝炎ウイルス感染の割合も西高東低なので、肝がんの地域差はウイルス感染の地域差で説明がつきそうである。

 がんは発生する臓器によって予後が異なる。いわゆる「がんの質」を良、中、不良に大別すると、甲状腺、乳房、子宮などのがんは比較的良好、胃、腎、結腸、前立腺などのがんは中等度である。だが肝は食道、肺、膵などとともに予後不良のグループに入る。

 肝がんは自覚症状がない人が多く、直径5センチ程度に大きくなるまで診断するのが難しい。また、切除できるのは全体の30%に過ぎない。さらに「多中心性再発」といってがんが1箇所に発生するのではなく、多くの部位で一斉に蜂起するため、予後が良くない。

 昨年11月、厚生省が少なくとも200万以上いるとみられるC型肝炎と、百数十万人の感染者がいると推定されるB型肝炎に対して異例のプロジェクトチームを立ち上げた。やっと肝炎全般の予防や治療の研究、知識の普及などに取り組み始めたわけである。

 肝炎の予防や治療を徹底するには、肝炎ウイルスの検査が導入された1989年以前に輸血を受けた人々に血液検査を呼びかけることが大切である。肝炎ウイルス感染者にはインターフェロン療法、肝がんの早期発見のための定期的な検査を行うとともに、禁酒、禁煙といった生活習慣の変更も必要である。

日経 2001年1月29日