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                「危険な輸血」、年間2200人分?         
      











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 肝炎やエイズのウイルスに感染した可能性のある献血が、1年間に約2200人分もあった疑いが14日、日本赤十字社の推計調査で浮上してきた。

 輸血用の血液を供給する日赤に対し、厚生労働省が実態調査と該当血液の回収を指示していた。輸血が原因で感染症にかかる危険は、1999年の新検査法の導入で大幅に減少したとされるが、表面化しない感染被害が発生している恐れが出てきた。

 調査を進めているのは、主に1年以内に2回以上の献血歴を持ち、1度目の献血は検査結果が陰性(感染なし)だったものの、2度目の献血で陽性と判定されたケース。6月のある1週間で献血者約11万2000人のうち、1次検査で陽性が約60人出たデータをもとに、日赤が年間の献血者約380万人から該当人数を2200人と推計した。病原体の内訳は、B型肝炎約1700人、C型肝炎約350人、HIV(エイズウイルス)約70人など。

 現在の検査技術では、ウインドー期間と呼ばれる感染直後は、ウイルス量が少なく病原体を検出できない。感染が1度目の献血直前に起きていれば、検査をすり抜けてしまう。2度目に陽性判定だった血液は当然使われないが、厚労省は1度目の献血で陰性と判定された血液に感染の危険性があることを重大視した。

 日赤は、新検査法は精度が高く、すり抜けが起きる可能性は極めて低いとして、一部を除き、血液の回収や輸血患者の健康確認といった追跡調査を実施していなかった。しかし、厚労省は先月、B型肝炎の感染例の報告を医療機関から受けて、事実関係を確認した結果、日赤の体制が不十分と判断、調査などを命じた。

 輸血用血液の有効期限は最長1年で、未使用で残っている血液については、日赤が回収を始めた。一方、既に使用された分について、厚労省は1年に限定せず、可能な限りさかのぼって、医療機関を通じ患者の健康状態を確認させる方針で、輸血後の検査を受けていない患者には、受診を呼びかける。検査には健康保険が適用される見込み。

 感染の危険性のある血液が出回ったことについて、日赤血液事業部は「国と率直に意見を交換して、最新の知見を踏まえた事業実施を国民の理解と協力のもとに致したい」と、読売新聞の取材に文書で回答した。

 国立感染症研究所の小室勝利・血液安全性研究部長の話「輸血の安全性を可能な限り高める上で、国の指示は妥当なものだ。日赤は迅速な対応が求められる」

 ◆ウインドー期間=感染直後で病原体を確認できない期間。病原体の遺伝子を調べる新検査法の導入で短縮されたが、現在もB型肝炎ウイルスで感染後34日間、C型肝炎ウイルスで23日間、HIV(エイズウイルス)で11日間は検出が困難とされる。
讀賣新聞2003年7月14日