肝炎情報センター

                    <E型肝炎>患者3人が死亡 国内で初めて確認









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 日本では海外渡航者しか発症例がないとされてきたE型肝炎で、渡航歴のない患者3人が死亡していたことが、東芝病院(東京都品川区)の三代(みしろ)俊治研究部長らの調査で分かった。日本での死亡例が確認されたのは初めて。E型肝炎ウイルス(HEV)が国内に定着したと見られ、厚生労働省も実態解明に乗り出す方針だ。

 三代部長らの研究成果は先月、大阪市で開かれた日本急性肝不全研究会などで報告された。

 三代部長らは東芝病院など計3病院で、原因不明の急性肝炎とされた患者計8人の血液からHEVを検出。このうち、北海道の病院で昨年治療を受けた20代の女性は劇症肝炎となり、生体肝移植を受けたが、間もなく死亡した。

 また、岩手医大と自治医大の研究グループも、岩手医大病院で93年と95年に劇症肝炎で死亡した60代の男性2人からHEVを検出した、と同研究会で報告した。いずれの患者も渡航歴はなかった。

 さらに、三代部長らが患者8人のHEVの遺伝子を分析したところ、7人の遺伝子が海外で報告された配列と異なっていた。三代部長は「もはやE型肝炎は輸入感染症ではなく、日本に土着したHEVが存在している」と話している。

 E型肝炎は、感染者の便などに含まれるHEVが経口感染して発症するウイルス性肝炎。一般には軽症だが、海外では妊婦の死亡例なども報告されている。途上国では飲料水から感染する例が多い。

 三代部長は「水道が整備されている日本で水系感染は考えにくい。昨年末、国内のブタからHEVが検出されたとの報告があったが、十分に加熱されていない家畜の臓物を食べて感染した可能性もある」と話している。 

 荒川泰行・日本大医学部第3内科教授(肝臓学)の話 E型肝炎は、これまでは海外渡航者の感染が主だったから、国内で感染者が出たということは、感染ルートの解明が重要だ。食生活が多様化しており、東南アジアからの輸入食材で感染した可能性もある。日本ではウイルスに対する免疫を持つ人が少なく、ウイルスが持ち込まれると一気に広がる恐れがある。特に抵抗力が落ちている高齢者は重症になりやすい。感染力はA型肝炎と同程度で、魚介類などの生もの、生水からの感染が多い。加熱調理でウイルスは殺せるし、手洗いを徹底すれば口に入りにくくなるので、こうした対応で感染は十分防げる。

 (毎日新聞)[2002年7月21日]