肝炎情報センター

                    薬害肝炎「6割発症」学会で84年に報告







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 血液製剤「フィブリノゲン」による薬害肝炎問題で、心臓手術で同製剤を使用した患者の6割近くが肝炎を発症していたとする研究報告が、1984年に日本輸血学会で発表されていたことが、9日わかった。

 同製剤は、87年に青森県の産科医院で集団感染が発覚するまで、産科や外科などの治療に広く使われており、同学会での報告は医療現場や当時の厚生省の薬事行政に生かされていなかった。

 厚生労働省は今年5月、関係7学会に、いつから同製剤の危険性を認識していたかなどを問い合わせていた。これに対し日本輸血学会から、84年の同学会総会で、当時、東大病院に所属していた医師が「血液製剤の種類別肝炎発生率」を報告していたと回答があった。研究報告はこの医師が集めた心臓手術の症例を分析したもので、フィブリノゲン製剤を投与された14人中8人(肝炎発生率57%)が、手術後に肝炎(ウイルスの型は不明)を発症していた。また、フィブリノゲン製剤を含め、各種の血液製剤を投与された患者24人のうち13人(同54%)が肝炎を発症していた。

 これに対し、血液製剤を投与されなかった59人の患者のうち肝炎を発症したのは2人(同3%)だけで、血液製剤と肝炎の因果関係が明確に把握できる研究結果が導き出されていた。

 このほか、同学会からの回答では、これより3年前の81年の総会で、国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)の研究者がフィブリノゲン製剤のB型肝炎ウイルス(HBV)汚染状況を発表していたこともわかった。66年から80年までに製造されたフィブリノゲン製剤についてHBV抗原検査を行ったところ、77年までに製造されたものは、すべて陽性だったという内容だったが、これも学会報告にとどまり、医療機関や当時の厚生省への注意喚起には至らなかった。
 読売新聞 2002年7月10日