肝炎情報センター

            [大いに学ぶ]最先端治療 しゃ血治療、
     C型慢性肝炎の沈静化に期待 /岡山










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 C型慢性肝炎の特効薬として、インターフェロン(IFN)という抗ウイルス剤を投与しC型肝炎ウイルス(HCV)を排除する治療法が広く行われています。IFN治療は日々進歩してますが、鉄分が肝臓にたまっている患者には、効きにくい場合もあります。そこで、鉄分を減らすため血液を抜く「しゃ血治療」がIFN治療と併用され、C型慢性肝炎を鎮静化させることが期待されています。玉野市民病院の木村文昭・主任内科医長(50)は「『しゃ血治療』を通して、健康に良いとされる鉄分が実は、C型慢性肝炎の患者の肝臓に悪影響を与えている一面も知ってほしい」と話しています。 【山本芳博】

 しゃ血治療とは、肝臓にたまった余分な鉄分を血液を抜くことによって間接的に減らす方法です。献血と同じ方法なので安全に行えます。94年に林久男・名古屋大助教授(現北陸大教授)が世界で初めて患者にしゃ血治療を行いました。昨年10月に日本肝臓学会で推奨されるべき治療に位置づけられました。

 肝臓はもともと鉄分の貯蔵庫です。鉄分は、肝臓内で酸素と結びつき活性酸素を発生させます。この活性酸素が元凶で肝臓の細胞がどんどん破壊されていくのです。そして、破壊が進むと、やがて肝硬変や肝がんになります。

 肝臓内の細胞のみに存在する酵素(ALT)が、肝臓内の細胞が壊されると血液中に流れ出します。このALT値を測れば肝臓の細胞がどれだけ壊れているのかがわかるわけです。通常35〜40IU/L(血液1リットル中のALT数量を示す単位)以下が正常値です。60IU/L以上なら肝臓の細胞がかなり壊れていて、しゃ血治療の対象になります。

 しゃ血治療は初期治療として2週間に1回200ミリリットルの血液を抜き取るのが標準。患者の状態を考えて、医師が1回のしゃ血量やペースを決めます。通常7〜10回行い、抜き取った血液量が2〜3リットルぐらいになると肝臓にたまった余分な鉄がなくなり、ALT値が下がってきます。つまり、肝炎の進行が抑えられるのです。次に維持治療として3か月に1回血液を抜き取ります。

 しゃ血治療が試みられて約10年がたちますが、長期の観察報告の中にはC型慢性肝炎の組織学的な進行が強く抑えられたとの内容や、発がん抑制につながる遺伝子障害の減少を示す内容のものがあります。

 しゃ血治療が有効な条件として次のことが挙げられます。肝臓に鉄が多くたまっているC型慢性肝炎の患者で心、肺や腎機能に支障がなく、肝臓がん、貧血、妊娠やその他合併症のないことなどです。また、しゃ血治療のみではHCVを排除することはできず、IFN治療と併用することが必要です。
毎日新聞