肝炎情報センター

                    C型肝炎、新たに13万人確認の可能性











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 C型肝炎の緊急対策として、40歳以上の主婦や自営業者らを対象に市町村が実施している基本健康診査(住民健診)に今年度から導入されたC型肝炎ウイルス(HCV)検査で、5年間で少なくとも13万8000人のHCV感染者が新たに確認される可能性のあることが、厚生労働省のC型肝炎疫学研究班(主任研究者=吉沢浩司・広島大医学部教授)の試算で26日、明らかになった。

 しかし、試算には、サラリーマン対象の職域健診などは含まれておらず、「潜在感染者」は試算をはるかに超えていると見られる。

 研究班は、日本赤十字血液センターの協力を得て、1999年1―12月の間に初めて献血した人(初回供血者)約69万人の血液データを分析した。その結果、▽40―49歳で0・97%▽50―59歳で1・50%▽60―65歳で2・42%――と、年齢が高くなるとともにHCV抗体検査で陽性になる「抗体検査陽性率」が高くなることが判明。

 さらに、過去の疫学調査で、抗体検査で陽性となった人の約70%はHCVに感染していることから、抗体検査陽性率に70%を乗じた数値を「HCV感染率」とした。

 一方、2000年度1年間に老人保健法に基づく基本健診を受診した約1153万人を年齢層別に分類。それぞれのHCV感染率を乗じた結果、13万8000人余に上るHCV感染者が健診で新たに確認される可能性があるとした。

 基本健診でのHCV検査は、原則的に40―70歳までの5歳刻みの年齢を対象にした「節目検査」で実施されるため、毎年1100万人余に上る受診者は、5年間で全員がHCV検査を受けるものとして算定した。

 吉沢教授は「あくまで2000年度の受診実績をもとにした試算」としたうえで、「ベースとなった献血は、主に健康な人が行うものなので、基本健診での抗体検査陽性率はさらに高くなる可能性があり、潜在感染者は試算以上になると考えるべきだ」と話している。

 国内のC型肝炎感染者は100万―200万人といわれているが、正確な感染者数は把握できていない。

 基本健診の対象者は約2800万人だが、年間受診率は約4割程度。加えて、組合管掌健康保険(被保険者約1600万人)や政府管掌健康保険(同約1900万人)に加入するサラリーマンは、基本健診の対象になっておらず、同省は、全国の健康保険組合に対しても、HCV検査の導入促進を呼びかける。

 日本では、年間約3万人が肝がんで死亡している。肝がん患者の7―8割はHCV感染が原因とされる。インターフェロンを使って治療できるケースも増えているが、発見が遅れるほど治療成績は悪くなる。

 外口崇・同省老人保健課長は、「緊急対策の準備が遅れている自治体への働きかけや受診率向上への取り組みを、さらに強化したい」としている。また、高畠譲二・日本肝臓病患者団体協議会事務局長は、「C型肝炎は自覚症状がほとんどなく、気づいたときには肝硬変や肝がんにまで進行していたという人も多い。国や自治体は健診の受診率向上に努めるべきだ」と話している。
 読売新聞 2002年5月27日